銃社会アメリカで日本人が気を付けることとは?
アメリカ人でも銃を所有しない人はもちろんいますし、銃を所有することに批判的な人もいます。
ですが、アメリカで滞在したり、暮らしている限り、相手は銃を持っているかもしれないと私たち日本人は常に
頭の片隅に入れて行動しなければなりません。
連邦議会調査局(CRS)が2012年にまとめた報告によると、09年に米国内に流通した銃は
3億1000万丁に上ります。内訳は挙銃1億1400万丁、ライフル銃1億1000万丁、散弾銃8600万丁となっています。
銃を使用した事件、自殺、事故による死者数は年間3万1000人を越えます。
車社会のアメリカでは、ヒッチハイクが盛んで、道路沿いに立ってヒッチハイカーを拾って
車を乗せてあげる人もいますが、ときに銃を突きつけられて車を奪われることがあるので注意が必要です。
1992年、ルイジアナ州で日本の16歳の高校生がハロウィンパーティーの場所を間違えて、別の家の敷地に入ったため、
不法侵入者として銃で撃たれて亡くなるという悲劇が起こりました。
またニューヨークの大学に留学していた日本人の女子学生がホールドアップ強盗に遭った事件も起きました。
銃を所有することはアメリカでは憲法に保障されていて、自分の身は自分で守るという自助の精神は
アメリカ人の好むところなのです。確かに銃を持てば安心かもしれませんが、
持つことによって別の不安も生じてきます。それは、相手も銃を持っているかもしれないし、
相手に撃たれる危険性もあるかもしれないという不安です。
1993年に銃規制法を改正する形でブレイディ拳銃暴力防止法が制定され、
免許を持つ販売業者から銃を購入する顧客を対象に、所持資格の背景調査が義務づけられました。
また背景調査に備え、連邦捜査局(FBI)は全国即時犯歴照会システム(NICS)を構築しています。
銃社会といわれているアメリカで暮らすには、自分たちも銃を持った方がいいのではないかと
いっとき日本人の間で話し合われたことがあります。しかしながら、持ちなれないものを持つことへのためらいが大きく、
実現には至りませんでした。銃を所有するということは、銃の手入れはもちろんのこと、
安全に管理することも所有者の責任となります。銃に不慣れな日本人には荷が重すぎるのではないでしょうか。
・参考文献
共著『新時代アメリカ社会を知るための60章』明石書店(2013年)
榊原明子『あんパンとアメリカ~アメリカで暮らせば日本がわかる~』銀の鈴社(2015年)