【連載第1回】 アメリカ史を読み解く 独立までの歩み
【連載第1回】 アメリカ史を読み解く
人種・民族的多様性が特徴であるアメリカは、10年に1度の国政調査の推移から人口動態(デモグラフィ)の変化を知ることができる。現在はIT産業の進歩が目覚ましく、人々の生活が大きく影響を受けている。アメリカで生じたことが、極めて短時間のうちに世界に広がることはグローバルな社会において周知の通りである。それゆえ、アメリカ国内で起きていることは、一種の見取り図として私たちの社会で起こっていることと照らし合わせて考える機会になるようにも思える。
ここでは、まず1776年の独立宣言に始まるアメリカ史を振り返る。そして、今アメリカにとって大きな課題となっている移民制度(改革)について社会背景を踏まえながら概略をみていきたい。現在、アメリカに居留している推定1000万人を超える不法(非合法)な外国人をいかに処するか―全員にアメリカ合衆国市民権を与える、あるいは、いくらかでも不法滞在が疑われる者を国外追放すれば解決されるという単純な問題ではない-でアメリカの拠って立つ理念および同国の政治・経済・社会のありようが問われるともいえる。
独立宣言から憲法制定へ - 18世紀
コロンブスによって「発見」されたアメリカは、たちまち欧州列強による植民地争奪戦の舞台に
アメリカ独立までの流れ
イギリス: フレンチ=インディアン戦争に勝利し、覇権を確立
戦後のイギリスはアメリカ駐屯の軍事費などを賄うため、「課税法」を制定
→ 植民地側:「代表なくして課税なし」をスローガンに反対運動
1773年 茶税法:経済圧政のシンボル
→ 「ボストン茶会事件」:民衆が茶船から紅茶箱を海上に投棄する
イギリス vs 植民地
トマス・ペイン『常識』(1776年):民衆を結束させたとされる本 - 君主制を否定し、独立が当然の常識
- 米仏同盟の締結などによって、植民地側が次第に英軍を圧倒
- 1783年 イギリスはパリ講和条約でアメリカの独立(東部の13州)の独立を承認
1776年7月4日 独立宣言
― 独立達成後は、対外的にも1つの国家として行動する必要があり、翌年1777年に連合規約を採択する
1787年 連邦憲法案が採択 ―ワシントンを議長とする制憲議会によって採択
1789年 ワシントンが初代大統領に就任
- 世界最初の民主主義がスタート
アメリカ独立の意味とは
アメリカの独立戦争は、イギリスから分離独立するための戦争という意味を持っていただけではなく、「旧体制(君主制)とは異なった新体制(共和制)に基づく新秩序の形成という意味で、すぐれた革命的な目的をもった戦争」であり、1789年のフランス革命などに強い影響を与えた。
- 参考文献
共著『新時代アメリカ社会を知るための60章』明石書店(2013年)
堀本武功『現代アメリカ入門』明石書店(2004年)