アメリカ外交における中東とは
アメリカ外交における中東とは
アメリカで中東と本格的なかかわりを持つきっかけは、1920年代に
イラクで、30年代にサウジアラビアで石油発掘の権利を得たことにあります。
冷戦の勃発にともなって、中東地域でのソ連の影響力の排除と
石油利権の確保をめざすアメリカにとって、イスラエルの建国は
外交政策に複雑さをもたらす出来事でありました。
以降、アメリカの中東政策はイスラエルの安全を守りながら、
この地域の反共国家と協力してソ連の影響力に対抗し、しかも豊かな産油国と
友好的な関係を維持するという容易に共存し難い目標を追うこととなりました。
アメリカが中東和平に向けて積極的に外交努力を推進する契機となったのは
第四次中東戦争の影響があります。この間アメリカは、有数の産油国である
イランとサウジアラビアとの緊密な外交・軍事関係の維持に努めました。
しかし、イランのイスラーム革命、エジプト以外のアラブ諸国とイスラエルの関係の
正常化問題、パレスチナ解放機構(PLO)の取り扱いなど
アメリカが対処しなければならない懸案は山積みしていました。
新冷戦の発端がその隣国のアフガニスタンをめぐる米ソ対立であったことは、
アメリカ外交に占めるこの地域の重要性を改めて示す出来事でした。
冷戦終結後も中東では、イスラエル=パレスチナ和平、9.11、アフガニスタン戦争、
イラク戦争、アラブの春、IS(イスラーム国)の台頭など、これらへの対処が
国の安全に関わる外交上の課題となっています。
近年のシェール革命は、アメリカの中東政策へ明るい兆しを見せる出来事となるのでしょうか。
アメリカの中東油田への依存は減少し、アメリカは2015年に39年ぶりに世界最大の産油国に復帰しました。
シェール革命はアメリカの中東政策の重要な変数となっているため、今後の成り行きに注目がされています。
参考文献
佐々木卓也『戦後アメリカ外交史』有斐閣アルマ、2017年